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大分地方裁判所 昭和58年(ワ)685号 判決

原告

大分東芝ハウジング株式会社

右代表者代表取締役

鮫島明博

右訴訟代理人弁護士

牧正幸

被告

浦池晶士雄

右訴訟代理人弁護士

濱田英敏

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は原告に対し金六一四万八六一九円及びこれに対する昭和五八年一二月四日から支払ずみまで年六分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  建築業・東芝住宅の販売代行店業務を営む原告は、訴外東芝住宅産業株式会社を代行して、昭和五八年三月一二日被告と、次のとおり工事請負契約を締結した(以下、これを「本件契約」という。)。

(一) 建築場所は、大分市大字葛木字七本松七七七番四一三四・六九平方メートルの土地(以下、これを「本件土地」という。)とし、軽量鉄骨造瓦葺平家建、床面積八二・八七平方メートルの建物一棟(以下、これを「本件建物」という。)を建築する。

(二) 請負代金は、七七五万円とし住宅金融公庫及びローン貸付実行とともに支払を受ける。

(三) 被告において本件契約を解除したときは、被告は原告に対し契約金のいかんにかかわらず三〇万円を手数料として支払う。

2  本件契約締結とともに原告は被告から契約金として三〇万円を受領した。

3  本件土地は、訴外鷲栄土地建物株式会社(以下「訴外会社」という。)の所有であり、被告は、訴外会社から本件土地を購入すべく、昭和五八年三月一二日、訴外会社との間において、売買代金は五八〇万円(水道負担金一〇万円を含む。)、代金支払方法は契約とともに二五万円を支払い、残金五五五万円は同年五月一四日限り支払う、との売買契約を(訴外高良直が訴外会社の使者として申込み・承諾の各意思表示の伝達をして)締結した(以下、これを「本件土地売買契約」という。)。

4  本件土地売買契約に際し、原、被告及び訴外会社との間に次のとおり合意が成立した。

(一) 売買代金五七〇万円のうち、二五万円は原告が被告から受領した契約金三〇万円のうちから支払い、残金五五五万円は原告が被告に貸し付け、被告はその借受金をもつて訴外会社に支払う。

(二) 訴外会社は、被告から売買代金の支払を受けるとともに、本件土地につき権利者を原告とする所有権移転仮登記手続をなし、被告が原告に対し、前記借受金を返還したとき、被告に対し、本件土地の所有権移転登記手続をする。

5  右合意に基づき、昭和五八年五月一〇日、原告は、被告に対し、五五五万円を、被告が住宅金融公庫から借入れができたとき返還を受ける約束で貸し渡し、被告は、右借受金を土地売買残代金として訴外会社に支払つた。

6  ところが、被告は、昭和五八年七月一二日原告に対し、本件契約を解除する旨の意思表示をなした。

7  右契約解除により、被告は住宅建築をしないこととなり、したがつて住宅金融公庫からの借入れもしないこととなり、被告は、原告に対し、前記貸金の返還義務がある。

また、右契約解除により、原告は次のとおり損害を被つた。

(一) 本件土地の所有権移転仮登記手続費用 一万五一〇〇円

(二) 本件土地の固定資産税支払分 七〇〇五円

(三) 本件土地売買の際の仲介手数料 立替分 二三万一〇〇〇円

(四) 水道料納付分 七万二八一四円

(五) 契約書及びローン申込書の貼付 印紙代 二万二七〇〇円

以上合計 三四万八六一九円

8  被告の右契約解除により、特約に基づき、被告は、原告に対し、三〇万円の手数料を支払う義務があるところ、原告は、被告から受領した契約金三〇万円のうち土地売買代金の一部として支払つた二五万円の残金五万円を右手数料の一部に充当したので、手数料残金は二五万円である。

9  よつて、原告は、被告に対し、貸金等合計金六一四万八六一九円及び本件支払命令送達日の翌日である昭和五八年一二月四日から支払ずみまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1中、原告の営業を除く、その余の事実は否認する。

被告は、本件契約を確定的には締結していない。

すなわち、原告の本件販売物件が総額一五〇〇万円で、被告の資金が約一〇〇万円程度で残金一四〇〇万円は必然的に融資を受けなければならなかつたところ、その金利は、県住宅資金特別融資(以下「県融資」という。)・年金福祉事業団融資(以下「厚生年金融資」という。)が各五ないし六パーセントであり、民間資金が八ないし一〇パーセントであつて、両者には年間の利息払だけで一〇〇万円余の差異があり、妻と就学児童一人を抱えている被告としては、当然右差異に無関心ではいられず、県・厚生年金の両融資が受けられない場合でも、右民間資金で大半の金策をしてまで建築する意思はなかつたし、到底、それが許される条件も整つていなかつたから、当初から、県・厚生年金及び住宅金融公庫の各公的融資が利用できることを契約締結の不可欠の前提としてそのための交渉をしてきた。その交渉過程において、原告会社が社内実績を作るための形式を整えるためと称して、被告に甘言を弄し、真実の意思内容に基づかない多数の文書を作成させたが、後日、県・厚生年金両融資が得られないことが確実となり、根本的に事態が異なつたので、原告との右契約締結交渉を成立前に打ち切ることとした。

2  請求原因2中、原告が被告から三〇万円を受領したことは認めるが、その受領の趣旨は否認する。

3  請求原因3中、本件土地が訴外会社の所有であることを除く、その余の事実は否認する。本件土地が登記簿上訴外会社名義となつている点は認める。

4  請求原因4の事実は否認する。

5  請求原因5中、訴外会社に対し五五五万円が支払われたことは知らないが、その余の事実は否認する。

6  請求原因6の事実は認める。ただし、その契約解除の意思表示は、本件契約(及びこれと一体をなす本件土地売買契約)の有効な成立を前提とするものではなく、契約締結のための前記不可欠の前提を欠く事態に至つたため、被告がその契約締結交渉を打ち切りたい旨原告に申し出たのに対し、原告が本件契約(前同)についての契約書などの存在を根拠にして右申出に応じないので、右打切りの目的で行つたものである。

7  請求原因7の事実は否認する。

8  請求原因8は争う。

三  抗弁

1  原告が被告に対し商談として持ち込んだのは、いわゆる土地付注文住宅という建売住宅交渉の件であり、本件土地購入の斡旋依頼と建築工事請負の独立した別々の契約としたことはなく、訴外高良直が原告会社従業員の資格とは別異に、訴外会社の使者としての資格をも有する旨を被告に示したこともなく、本件土地売買契約書(甲第三号証)は、訴外高良直が一時に被告に署名・押印を求めた多数関係書類の一つであつて訴外会社の表示はなかつたし、本件土地売買の合意は、本件(工事請負)契約に後日資金上の問題が生じても解約できないものである等の説明もなかつた。

したがつて、被告は、訴外会社との間で、本件土地売買の交渉、契約などをしたという意識は一切ないが、仮に、本件工事請負契約とは別個に、本件土地売買につき請求原因4のような合意が成立した旨の契約書などが存在するとすれば、被告は、原告に対し、土地付注文住宅という一体的な建売住宅契約締結の件である旨を通じたうえで、右契約書などに署名・押印しており、要素の錯誤があり、右合意は無効である。

2  仮に、本件契約(ただし、前記のとおり、それはいわゆる本件土地売買契約と一体となつたものである。)が締結されたとしても、本件契約におけるローン利用の約定は、自己資金以外全部を原告の斡旋するローンで借り入れるといつたものではなく、当初から、県融資、厚生年金融資、住宅金融公庫融資の三口の公的融資がなければ被告において月々の支払及び金利負担ができず、土地付注文住宅の購入計画を中止しなければならないという内容のものであつて、これら低金利の公的融資三口全部の実現が、不可欠の前提とされていたが、昭和五八年六月一五日県融資・厚生年金融資の各申込みが落選し、資金計画が不能となつたため、被告は、同月一七日電話で、次いで同年七月一二日書面で本件契約を解除する旨の意思表示をし、本件契約の効力は失われた。

仮に、本件土地売買契約が有効に成立したとしても、訴外会社は、訴外高良直が従業員として所属する原告会社を介し、同訴外人をその使者とした趣旨であるから、原告会社に対し、被告が昭和五八年六月一七日土地建物の全資金につき調達不能となつたことを理由に契約解除の申入れをしたことは、原告主張のように本件土地売買契約が(本件契約とは)独立したものであるとしても、これに対する有効な契約解除の意思表示がその時点で到達したものといえる。

四  抗弁に対する認否

争う。

第三  証拠関係〈省略〉

理由

一1  原告は本件契約(請求原因1)及び本件土地売買契約(同3)が成立したと主張するのに対し、被告はこれらがその契約締結交渉過程の途中で打ち切られた旨抗争するので判断する。

ところで、甲第二号証(工事請負契約書)及び同第三号証(契約書〔土地売買契約書〕)の各記載・存在、並びに証人高良直の証言の一部は、それぞれ右原告主張事実に直接そうかのようであり、また、(一)右甲第二、三号証中の被告及び訴外蒲池悦子の署名押印部分の成立に争いがないこと、(二)甲第四ないし第二四号証の各記載・存在及び証人高良直の証言中のこれら甲号各証の成立についてふれる証言部分は、それぞれ一見右各外形上直接的な証拠を近かれ遠かれ裏付けるかのようである。

2  しかしながら、〈証拠〉を総合すれば次の各事実が認められる。

(一)  被告は、本件契約締結交渉当時、新制中学校卒業の四一歳でコークス再処理営業会社の従業員として勤務し妻及び小学校四年生の子供と三人の社宅暮しで、コークス再処理営業会社の従業員として勤務して月給手取り約二〇万円をえ、建築資金融資の返済に当てることができるのは月額約三万円余であり、預金は約一〇〇万円であつたが建築資金に全額当てれば手持金がなくなり不時の出費に応じられない経済状態にあつた。

(二)  かねてから持家を欲しいと思つていた被告は、建売住宅販売に関心を寄せていたところ、昭和五八年二月末ないし三月初め、被告宅を訪問販売のため来訪した原告会社従業員訴外高良直から、当初、原告会社の分譲地「瑞穂苑」団地の建売住宅の案内・勧誘を受けたが、資金計画打合書を作成してもらつたところ、被告の返済可能の範囲に収まらず予算的に合わないということとなり、三回目の訪問で本件土地が所在する「葛木」団地を案内され、原告会社が訴外会社から建物と抱き合わせで販売させて貰つている本件土地を紹介された(なお、本件においては、訴外高良直と訴外会社との使者関係にかかわる証拠はない。)。

(三)  本件土地を選んだ被告が「一四〇〇万円程度の居住用建物を低金利の公的融資を利用する条件で建築したい。ところが(自己〔手持〕資金の関係で)昭和五九年に入つてから建築したい。」と申し入れたところ、訴外高良は「早急にしないと高金利の融資しか世話できない。」と急がせ、昭和五八年三月初旬訴外高良と資金計画打ち合わせを行い、建築資金は、土地建物一括抱き合わせにて、現金、県融資、厚生年金融資住宅金融公庫融資等で支払う話合いとなり、都合四回目の資金計画打合書(甲第一一号証)で、県融資三〇〇万円、厚生年金融資で六〇〇万円等を手当することが計画されたが、その際、被告は、訴外高良に対し「(右各融資が抽選であることから)落選したときには(高金利の返済はできないので)建築は中止する。」と申し出た(もつとも、その後の段階で、訴外高良自らは、落選したときには、〔被告にはその意思はないのに〕、原告関連の民間ローンを斡旋するなどと称していた。)。

(四)  当時、県融資の利率は、年間五パーセント、厚生年金融資は六・五パーセント、住宅金融公庫は五・五パーセント、東芝ローンは七・八パーセントであつた。

(五)  同年三月一〇日被告は原告に対し東芝住宅不動産申込約款(乙第二号証)に基づく申込金(なお、同申込金は、原則として不動産売買契約代金の一部として充当されるが、金融機関等の融資が不能となり、資金計画が成立しなくなつたときは返却されるし、申込日より三〇日を経過して契約締結に至らない場合、申込者は期限の利益を失い、申込金を放棄したこととみなされる旨定められている。)(要するに、キャンセル防止のために徴するものである。)三〇万円の内金五万円を支払つた。

(六)  同年三月一二日、訴外高良は、被告方を約一時間訪れ、その時間内に両者のみにて(訴外会社その他の関係者はいなかつた。)、本件建売注文住宅申込みに関する説明をし、本件工事請負契約書(甲第二号証)、本件土地売買契約書(甲第三号証)、並びに本件金銭消費貸借抵当権設定契約書(甲第五号証)、その他重要事項説明書(甲第四号証)、原告会社宛領収証(甲第六号証)、それに安田生命保険相互会社宛住宅ローン借入金申込書(甲第一四号証)等合計十数通の関係書類を指示して被告をして署名押印させたがことに右具体的掲記の各書類は、いずれも不動文字以外についてはその記載がなく、署名押印箇所(欄外のいわゆる捨印箇所も含む。)に鉛筆書で記しを付けるなどして指示作成させ、かつ、被告から、前記申込金残金二五万円を受領した。しかし訴外高良は、その際、被告に対し、右二五万円の領収証(乙第四号証)及び不動文字以外の書込みのない東芝住宅不動産お申込書(乙第二号証)を渡したのみで、前記具体的掲記の各書類その他の関係書類は「住宅金融公庫等の融資申込みに必要である。」と称して(実際には、契約書類の原本は必要でなく写し〔コピー〕を提出することになつていた。)結局これらを交付せず、原告会社に持ち帰り、自ら、原告会社事務員、あるいは、訴外会社その他の関係者らに書込みをさせて完成した。

(七)  被告が、本件土地を現地で見分した際、そこには訴外会社の看板も、原告会社の建売予定地であることを示す看板もなく、被告は、訴外高良から、本件土地が原告会社所有地ではないと告げられたのみで(かえつて、原告会社では、土地付注文住宅という一括抱合販売であるため、顧客が土地所有者と直接契約することを恐れて、土地所有者名は顧客に秘匿する方針であつた。)訴外会社の名は教えられず、建物と不可分一体に購入するつもりで原告に委せ切りにしていたし、原告において被告が訴外会社から本件土地を購入することを斡旋し、その土地上に訴外東芝住宅産業株式会社が住宅建築を請負うという二個の契約が存在し、原告が右の売買斡旋料の請求を留保し、前示申込金残金二五万円が本件土地確保のために手付金名目で訴外会社に対し流用支払され、金銭消費貸借・抵当権設定契約による原告の被告に対する貸付金形式により本件土地代金五五五万円が被告に代つて原告から訴外会社に支払われた(利息の話も出なかつた。)等については明確な意識がなく、ちなみに、本件土地については訴外会社から昭和五八年五月二四日付で原告のため所有権移転仮登記が経由されており、被告が訴外会社の名を最初に知つたのは後日原告から損害賠償請求がなされた際であり、もとより、被告が訴外会社から本件土地所有名義の受領を要求されたことはない。

(八)  本件契約についての工事請負契約書(甲第二号証)に関して、原告において間取図、配置図、仕様書及び資金計画打合書等が作成されたが、設計図については、同契約書の記載においてすでに作成されていることを前提としているのに実際は作成されておらず、原告会社内部では「契約成立後」作成することとしていた。

(九)  原告が被告のために申込みをしていた厚生年金融資、県融資は、それぞれ同年六月一五日、同月一七日に相次いで落選が決定したため、被告は、訴外高良に対し「月々の支払が多くなるので中止したい。」と申し入れたところ、訴外高良は「本件土地が被告のものになつているのでやめられない。」と応じたので、さらに、被告が「公的融資がないと建てられないことは十分承知しているではないか。」と答えて、話が拗れ、原告が種々の請求をし始めた。

以上のとおりであつて、証人高良直の証言中右認定に反する部分は前挙示採用証拠に照らして信用することができず、ほかに右認定を左右するに足りる証拠はない(なお、後示参照)。

3 右各認定事実にみられる本件における契約締結交渉当時の被告の支払能力・経済状態、及びこれらに照応する購入目的物件の選択・資金計画の吟味・公的融資への依存度、公的融資と民間資金の金利の差異、申込金徴収の趣意、契約書その他の関係書類の作成・取交し状況、本件土地売買の一連の取扱い、設計図の作成留保、公的融資落選後の原、被告双方の遣取り等を相互関連的総合的に検討すれば、被告が土地付注文住宅を購入するには資金計画上必然的に融資、それも民間資金ではなく低金利の公的融資に依拠せざるを得ず、契約締結手続上の諸問題の処理は原告に一任しつつも、右公的融資の利用を購入契約締結の不可欠の前提とし、その当選がなければ土地付注文住宅の購入計画の中止、すなわち右購入契約締結交渉途中での打切りもやむを得ないものとしていたのに対し、原告は、被告の右前提は熟知しつつも、土地付注文住宅販売の社内実績向上のため、被告に生活上多少の犠牲は強いても比較的高金利の民間資金利用を勧め、あるいは被告の契約締結交渉の不慣れを見越して強力に契約締結諸手続を推し進めたものと認めるのが相当である。

以上のような事情に照らせば、前示工事請負契約書、土地売買契約書等の作成は、それらがいわゆる処分証書であることを考慮に入れても、直ちに本件契約、本件土地売買契約の成立を意味するものと解することは困難であるのはもちろん、冒頭挙示の各証拠を併せてみてもいまだ前示原告主張事実を認めさせるまでには至らず、かえつて本件契約及び本件土地売買契約は、それら締結のための被告の不可欠の前提がその交渉過程の途中で欠けてしまつたことにより、右各契約を成立させようとする被告の申込者としての意思も消失してしまつたので、右事情を熟知していた原告も右申込みに応じて契約の成立を図ることはもはやできなかつたものと解するのが相当である。

4  ちなみに、(一)〈証拠〉によれば、前示公的融資落選直後頃、被告が、原告に対し、太陽熱温水器と台所の出窓取り付け費用について問合せをしたことが認められるし、(二)被告本人尋問の結果によれば、被告は、昭和五八年一二月訴外セキスイハウスに依頼し、第一生命住宅ローン(融資額三〇〇万円)を利用して土地付注文住宅を購入するようになり、昭和五九年三月その完成を見ているが、厚生年金融資(融資額七〇〇万円)をも利用し、月当り返済額四万円という約定であつたことが認められるが、右(一)(二)の認定事実は本件においていまだ前示の認定・判断を妨げるに足りない。

以上のとおりであつて、前記原告主張は失当である。

二よつて、右原告主張を前提とする原告の本訴請求は、右前提を欠くためその余の点について判断を進めるまでもなく、理由がないのでこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官江口寛志)

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